Yahoo!ニュース個人のヒット記事(2016年6月版)

定例記事です。先月は新規記事をあまり書けなかったので、結果的に大昔に書いて定常的にアクセスを得ている記事がランク入りしました。

1位.「高知東急」芸名使用差止請求事件を覚えていますか

高知東正がデビュー時点の芸名として高知東急(読みは「たかちのぼる」で同じ)を使っていた時に東急電鉄に訴えられた事件を覚せい剤事件の便乗記事wとして書きました。もう18年も前の話なんですねえ。

2位.ダイソーで売っているiPhone用Lightning充電ケーブルとアップルの特許について

2014年12月に書いた記事ですがまだ結構なアクセス数があります。

3位.ビットコイン「発明者」がブロックチェーン関連発明を大量特許出願

ビットコインの自称発明者であるSteven Craig Wright氏が英国特許庁にブロックチェーン関連発明を数十件出願していたという話です。出願公開は来年なので中身はわからないのですが気になるところです。

4位.ワンダーコアスマートの意匠創作者について

TVCMでおなじみの腹筋マシン「ワンダーコアスマート」の偽物を所持して意匠権侵害で逮捕された事件があったので、それの便乗記事wとして書きました。ワンダーコアスマートもワンダーコアも台湾で健康器具の通販をやられている方が意匠権を持っていて、ショップジャパン側にライセンスしているようです。だからどうだと言われると困りますが、単なる小ネタ記事でした。

5位.アップルを訴えた島野製作所の武器になった特許とは?

これも2014年10月に書いた息の長い記事。侵害訴訟は島野側一審敗訴の後に控訴されており、無効審判ももうじき審決のはずなんですが内容はWebからではまだわかりません。個人的にも大変気になる事件ではあります。

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Yahoo!ニュース個人のヒット記事(2016年5月版)

Yahoo!ニュース個人に自分が書いた記事の中から毎月アクセス数が多かったものを紹介していく定期投稿です。

1位.グーグルの人間ゴキブリホイホイ特許はベンツが40年前に通った道だった

歩行者との衝突時に粘着剤で歩行者をクルマにくっつけることで衝撃を和らげるというネタのような特許をグーグルが取得したという話です。こんな特許をグーグルが出願していたというのも驚きですが、1978年にダイムラーベンツが同様のアイデアを出願しており、グーグルは権利範囲を限定せざるを得なかったというのも驚きです。全体的には小ネタ記事ですが、斬新な発明だと思っていたが、実は大昔に出願されていて日の目を見なかっただけだったというのはよくある話です。

2位.”2ch”に加えて”2ちゃんねる”の商標権も西村博之氏のものに

西村博之氏がが、4月に”2ch”の文字商標を登録したのに続き、5月に”2ちゃんねる”の文字商標も登録したという話です。インパクトはこちらの方が大きいでしょう。なお、先に出願した”2ちゃんねる”の方が、なぜ後になって登録されたかですが、西村氏が特許庁からの補正指令を受け取っていなかったことによる審査の遅延の問題が大きいです。

なお、西村氏はWIPOに2ch.netのドメイン名紛争調停を申立てています。”2ch.net”の商標権に基づくものと思われますが、不正の目的の立証が困難ではないかと思います。

3位.Appleが中国でiPhone登録商標の奪還に失敗

中国企業による皮革製品(18類)を指定したIPHONEの文字商標登録に対してAppleが無効審判を請求したが棄却となったというニュースです。これによってこの中国企業がスマフォ用の革製ケースをIPHONEという商標で販売することにお墨付きが出てしまいました。出願時点でのiPhoneの中国国内でも著名性を立証できなかったことが理由です。海外の著名商標の保護が薄い中国の商標制度も問題ですが、手広く防衛的に出願しておかなかったApple側にも手抜かりがあったと言えるでしょう。

4位. ローリングストーンズにはドナルドトランプ氏に楽曲の使用中止を命じる権利があるのか

ドナルドトランプ氏が選挙キャンペーンでローリングストーンズの楽曲を使用したことに対してストーンズ側が使用中止を求めたというニュースです。結論は、音楽出版社や著作権管理団体(ASCAP)経由で著作権処理をしていても、パブリシティ権等の観点から作詞家・作曲家の直接許諾が必要であり、その許諾を得ていないのなら訴えられてもしょうがないというものです(ASCAPのガイドラインによる)。なお、日本でも、選挙活動での楽曲使用は著作者側の直接許諾が必要というのがJASRACのルールです。選挙での楽曲使用は人格権へのかかわりが大きいので当然と言えるでしょう。

5位ハーバード大がSTAP特許出願に審査請求:日本でも実体審査開始

てっきり出願審査未請求により取下になったと思っていたSTAP細胞に関する特許出願に(現在は唯一の出願人となっている)ハーバード大(ブリガムアンドウィメンズ病院)が審査請求を出していたという話です。正直、意外です。書類上のつじつまは合っているものの、その書類の信憑性が怪しいことが報道等から明らかという出願を特許庁はどう扱うのでしょうか?なお、フォローアップ記事「STAP出願は特許化されてしまうのか?」も是非ご覧下さい。


5位以下も興味深かったのでついでにご紹介します。

6位JASRAC対ファンキー末吉氏の地裁判決文が公開されました

末吉氏側の敗訴に近いです。JASRAC管理楽曲の演奏行為が認定された上で、利用料を払うか払わないかの問題なのでしょうがないと言えましょう。

7位フランク・ミュラー対フランク三浦が最高裁での戦いに

「フランク三浦」の登録商標に対する無効審判の審決取消訴訟が上告されたという話です。勘違いしている人は結構多そうですが、登録商標の有効性を争う裁判であって、パロディ時計の販売の是非を争う裁判(商標権侵害訴訟)ではありません。

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【雑談】ソフトウェア発明におけるプロダクトバイプロセスクレームはあり得るのか?

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(製造方法によって物の発明を特定するタイプのクレーム)についての最高裁判決に伴い、特許庁の審査運用が変わったのは周知かと思います。

プロダクト・バイ・プロセス・クレームは物の構造は直接的にはわからないが、こういう方法を使えばこういう物ができるんだということがはっきりしている場合に有効で、通常は、化学・生物関係の発明で使われます。

自分は、化学・生物関係はまったく専門ではないので、この話は全然関係ないかと想っていました。しかし、ひょっとするとソフトウェア関連発明でも関係することもあるかもしれないと考えてみました。

特許法上、ソフトウェア(コンピュータープログラム)は物ですし、コンピュータープログラムを製造する方法(たとえば、プログラムジェネレーターのアルゴリズム)は観念できます。ただし、コンピュータープログラムの作成方法はわかるが、それがどう動作しているかはわからないというケースは従来型のプログラムではあり得ないと思います。プログラムを作成するためにはフローチャート(的なもの)が必要ですし、フローチャートがあるということは、どのようなステップがそのプログラムに含まれているか明らかということです。これはプログラムジェネレーターで自動生成する場合も同じで、できたプログラムがどういう原理で動いているかわからないというのは想定しにくいでしょう。

ただ、従来型プログラミングを離れて、機械学習の領域にまで踏み込むと必ずしもそうとは言えないかもしれません。ニューラルネット(これは一種のプログラムなので特許法上の物です)の学習方法に特徴があって、その結果、顕著な効果を発揮するニューラルネットが作れるとしたら、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで表現するしかないかもしれません。ニューラルネット自体はブラックボックスでありその構造やステップを特定するのは困難(不可能?)だからです。たとえば、「xxxの特性を持つ入力データにより学習させたことを特徴とするニューラルネット」みたいな感じです。

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【実務者向け】情報提供における匿名バレ問題について

特許庁の運用として、審査中の特許・商標出願に対して情報提供(刊行物等提出)を行ない、登録要件の欠如を主張することが可能です。情報提供は匿名で行なうことが可能です。商標の場合は紙でしか提出できないのですが、特許の場合はインターネット出願ソフトで提出することができます。この場合に、添付ファイル(通常はPDFか画像ファイルになると思います)のプロパティデータに注意が必要です。

インターネット出願ソフトでファイル記録事項の閲覧を行ない、送付されてきた刊行物等提出書に対して「HTML変換」を実行すると、添付ファイルがオリジナルのままで復元されます。つまり、PDFファイルのプロパティデータに作成者や作成企業の名前が入ったままで情報提供すると、せっかく匿名にしてもそれをヒントに提出者がバレるリスクがあるということです(事務所名が入っているならまだしも、企業名がプロパティに入った資料をクライアントからもらってそのまま送ったりすると大変です)。

これに限った話ではなく、たとえば、クライアントにメール添付ファイルで送ったパワポやPDFファイルのプロパティに別会社の名前が入っていて、資料の使い回しがバレるなどというケースもありますので、社外に送るファイルのプロパティには十分な注意が必要です。

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Appleが中国でiPhone登録商標の奪還に失敗

「”iphone”革製品に商標権侵害ない、中国裁判所アップルの訴え退ける」というニュースがありました。中国のメーカー新通天地が所有する革製品等を指定商品とするIPHONEの登録商標を無効にするAppleの訴えが棄却されたという話です。ゆえに、記事タイトルの「”iphone”革製品に商標権侵害ない」は不正確で、「”iphone”革製品の商標登録は有効」とすべきです。

中国の裁判資料を読むのはちょっとつらいので、中国商標局のデータベースおよび他の様々な報道からの情報を総合すると以下のような経緯と思われます。

2006年頃:Appleが中国でiPhoneの商標登録出願(ただし、皮革製品は指定せず)
2007年7月:Appleが米国でiPhoneを発表
2007年9月:新通天地社が中国でIPHONEの商標登録出願(皮革製品を指定)
2009年:Appleが中国でiPhone販売開始
2014年:新通天地社のIPHONEが(異議申立後に)商標登録

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Appleにとっての問題は、Appleでの出願では皮革製品(18類)を指定していなかったので先願として新通天地社の商標登録を排除できなかったこと、Appleは2007年9月時点での新通天地社の不正の目的を立証すれば無効にできたにもかかわらず、裁判所(および商標局)は中国国内でのiPhoneの周知性を認定しなかったこと、の2点と言えます。前者については、商品が類似しないと先願の地位が及ばないのはどの国も同じなので、中国特有の問題とは言えません(どちらかというとAppleのミスです)。後者については、現在の中国の商標制度の問題(海外でのみ著名になっている商標の勝手出願を禁止する明示的規定がない)と言えます。

ちなみに、日本の場合には商標法の4条1項19号という規定があるので、海外で有名になった商標を抜け駆け出願されても比較的容易に無効にできます。

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

(略)

十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

この条文のポイントは海外のみで周知であれば国内では知られていなくても無効にできる点、および、商品が類似でなくても無効にできる点にあります。残念ながら現時点では中国にはこの条文に相当する規定がありませんので、中国国内でまだ周知ではない商標を中国で抜け駆け出願され登録されてしまうと、後から無効にするのは困難です。

アップルにとってやっかいなのは、iPhone用のケース(通常は携帯電話付属品として9類を指定します)の権利は押さえているのに、新通天地社が皮革製品の商標権に基づいてiPhone用ケースを製造販売する行為に対して権利行使できない点です。Appleは控訴して徹底的に争う姿勢のようです。

ポジショントークを承知で言えば、将来的に中国でビジネスを行なう可能性が少しでもあるのであれば、抜け駆け出願されてしまう前に先に中国で出願しておくことが最善策です。さらには、そのものずばりの商品・サービスだけではなく、取られると困る商品・サービスを防衛的に手広く指定しておくことも重要です。

中国の商標登録出願費用は1区分あたり10万円くらいです。さすがにあらゆる商品・サービスを指定すると450万円くらいになってしまいますが、AppleのiPhoneビジネスにとっては誤差のような金額なので、五輪エンブレム級に手広く出願しておくべきだったでしょう。

弊所でも中国への商標登録出願サービスを提供しています。1区分であれば約7万円で対応できますので、抜け駆け出願対策にご利用ください。

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