なぜ無料でノーギャラのコンサートにJASRACが金を取りに来るのか?

ちょっとタイミング遅くなりましたが、神奈川フィルハーモニー管弦楽団がノーギャラで奉仕活動でやっているコンサートで、JASRACが著作権使用料を要求したというニュースがありました(参照記事)。例によって、ネットでは「カスラック」的な議論が聞かれますが、これは、著作権法38条1項の規定によればしょうがないと言えます。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条  公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
(以下略)

要は、非営利、無料、ノーギャラの演奏には著作権者の許諾は不要ということです。この規定がないと、それこそ素人が宴会で歌うのにもJASRACの許諾が必要になってしまうので、まあ当然の規定であります。

ここで、無料、ノーギャラについては特に問題ないと思いますが、「非営利」という要件については多少誤解があるようです。たとえば、企業が主催する無料コンサートは、仮にノーギャラであっても、企業の広告宣伝という営利活動なので上記38条1項の規定には該当せず、権利者の許諾が必要となります(たとえば、中山『著作権法』p276を参照)。今回の件も神奈川フィルハーモニー管弦楽団が主催であった以上、議論の余地はありますが、まあしょうがないと言えそうです。元記事によれば、神奈川県や市が主催の時には、JASRACは来なかったそうなので辻褄は合っています。

では、実際にはいくら払わなければならないかというと、入場料無料で、講演時間が2時間以内、定員1000人のホールでやるとすると4000円です。オーケストラのコンサートなのでほとんどの曲は著作権切れの曲だと思いますから、一部の曲だけ著作権使用料を個別に払うということであればもっと安くなるかもしれません(詳細は、JASRACのサイトにある演奏会に関する料金規定を参照して下さい。)

養護学校向けのボランティアくらい無料にすべき(著作権法を変えなくてもJASRACの規約を会員の合意の元に変えることは可能)とか、4000円得るのに要する事務コストの方が高いんじゃないかみたいな議論はあるかもしれませんが、実はそれほどめちゃくちゃな料金ではないのです。

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