【再掲】セシルマクビー商標事件について

ひとつ前のエントリーで人名に関する商標の話を書いたついでに思い出した、自分が大昔(6年前)に書いたブログ記事、今でもたまにアクセスがあるので、こっちにも再掲しておきます(ちょっとだけ編集してます)。

みなさん「セシル・マクビー」というと何を想い浮かべるでしょうか?

普通は若い女性向けのファッション・ブランドでしょうね。しかし、ちょっとでもジャズに詳しい人は黒人のベテランジャズベース奏者を思い浮かべるでしょう。1950年代から活躍し、エルビンジョーンズなど大御所ともやったり、山下洋輔氏のピアノトリオで来日ツアーもしてたりする人です。超有名とまでは言いませんが、有名なジャズミュージシャンと言ってよいでしょう。私も個人的に大好きなベーシストの一人です。

なので、初めてファッションブランドの「セシルマクビー」の看板を見た時は、「同姓同名のデザイナーでもいるのだろうか?そんなにありふれた名前でもないのに?」と思っていたのですが、このブランドを使ってる会社は純然たる日本の会社で「セシルマクビー」という名前を適当に選んで付けたようです(この辺の事情ははっきりしないのですが、たぶん、代理店の人がたまたま見かけたレコードかポスターなどから何となく「おしゃれな響きの名前だなー」ということで選んだのではないかと想像します。)

で、ジャズ・ミュージシャンの方のセシル・マクビー氏は、このファッション会社の商標権の無効審判を請求しました。請求理由は、商標法4条1項8号です。条文はちょっとややこしいですが、

4条1項8号 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く)

は商標登録されないということです。

今回の話に関係あるところだけ整理すると、
1.他人の氏名
2.他人の著名な略称
は商標登録されません。
たとえば、「キムタク」は明らかに2なので、 木村拓哉氏の承諾がなければ商標登録されません(当たり前)。

で、セシル・マクビーの件ですが、特許庁の見解は、

a.セシル・マクビーは本名ではない。同氏の本名はミドルネームを入れたセシル・リロイ・マクビーである。
b.ゆえに、「セシル・マクビー」は「セシル・リロイ・マクビー」氏の略称である。
c.「セシル・マクビー」という略称はジャズの世界では有名かもしれないが、それを超えて著名とは言えない。

ということで、上記の1にも2にもあたらないということで、セシル・マクビー氏の訴えはすべて却下されました。

うーんどうなんでしょうね。「バラク・オバマはアメリカ大統領の本名ではなくその略称である」というのは結構違和感がある判断ではと思うのですが(何か前例がある判断なのでしょうか?)。

まあ、商標法は業界秩序維持が最優先なので、こういう個人の訴えを認めていたら切りがなくなるという判断が最初にあったのは否めないでしょうね。

ところで、ベーシストのセシル・マクビー氏なんですが、プレーはかなり黒っぽいですし、ルックスも濃い(写真参照)ですし、おしゃれなファッション・ブランドとはぜんぜんイメージが違うので、自分は(ジャズ好きな人はみんなそうだと思いますが)このブランドの宣伝見るたびに違和感を感じてしまうんですね。

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