ムーアのイノベーション実行モードのモデルをニコニコ動画に当てはめてみる

前回書いたジェフリームーアの『エスケープベロシティ』におけるイノベーションの実行モードの遷移の話ですが、ニコニコ動画に当てはめて考えてみるとわかりいやすかもしれないと思ったのでちょっと書いてみます。

ニコニコ動画はボリューム・オペレーション・ビジネスなので実行のモードは「プロダクト」(発明)→「パートナー」(展開)→「プロセス」(最適化)と遷移していきます。

Escape Velocity 2

最初の「プロダクト」の段階におけるイノベーションは、言うまでもなく動画再生にコメントをリアルタイムでスーパーインポーズして表示するテクノロジーです(ニコ動が世界初というわけではないですがイノベーションであったことは確かです)。ここでは、「インベンター」である開発者が重要な役割を果たしました(それはたぶん戀塚さん)。

しかし、優れた「プロダクト」を作っただけでは長期的な成功は達成できません。たとえば、動画にコメントを表示すると言うサービスでは中国のMojitiというサービスが先行していましたが、Mojitiは単独では成功できませんでした(Huluが買ってくれたので結果オーライではありますが)。ここで必要なのが「パートナー」の輪を広げていく作業です。ニコ動は一般ユーザーや広告主を増やすだけではなく、大手コンテンツ提供者との提携、さらにはJASRACとの契約も成し遂げました。ここでのリーダーは「デプロイヤー」たる川上会長だったのでしょう(たぶん)。

なお、この「パートナー」のステージでは、ニワンゴが、JASRACにも多大な収益をもたらしており、エイベックスの子会社でもあるドワンゴの子会社であることを無視できなかったと思いますん。そういうバックグラウンドがない会社がことを進めてもなかなかうまく行かなかったのではないかと思います。このステージでは理屈だけではなく政治力も大事です。『エスケープベロシティ』においても、iTunesが大手レコード会社との提携に成功できたのもジョブズがディズニーの取締役であってこそだったと書かれています。

そして、最後の「プロセス」(最適化)のステージでは、名前は存じませんがおそらくIT担当のマネージャが「オプティマイザー」として安定したサービスを提供するよう日夜努力されていると思います。安定稼働がちゃんとできなくてユーザーが離れていったネットサービスも多いので非常に大事なステージではあります。

ということで、ネットサービスに限らず、新規ビジネスを最後まで花開かせていくためには、「発明」→「展開」→「最適化」のすべてのステージにおいてそれに適したリーダーの元で実行力を発揮していかなければならないというお話でした。

カテゴリー: 経営戦略 タグ: パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です