【基本】対象が著作物でなくても著作隣接権は発生します

割と勘違いされている(自分も昔は勘違いしていた)著作隣接権に関する重要ポイントについて書いておきます。何で急にこの話を持ち出したかというと、YouTubeにアップされた国会中継動画にNHKが削除要請出した際に「国会中継映像は著作物なのか?だとしても、著作権の制限を受けるのではないか?(政治上の陳述だから)」みたいな議論が生じたのですが、それとは関係なしにNHKは放送事業者の著作隣接権に基づいて削除要請を出せるからです(なお、法律的には出せるというだけの話で、出すべきかという点はまったくの別論です。ここでは法律の基本の話だけをします。NHKの行為が正義なのかという点はどこか別の場所で議論願います。)

さて、日本の著作権法では、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者、実演家に対して著作隣接権という権利を付与するようになっています。著作隣接権の根拠は、創作の保護という要素もないわけではないですが(特に実演家の場合)、「投下資本の保護という産業政策的な側面が強い」とされています(たとえば、中山『著作権法』p423)。ゆえに、対象が著作物でなくても著作隣接権は発生します(「”著作”隣接権」という名前が誤解の元になっている気がします)。

いちばんわかりやすい例として、レコード製作者の著作隣接権(通称、原盤権)について考えます。

たとえば野鳥の鳴き声(あるいは蒸気機関車の音)を録音してCD化して販売しているとします。この場合、野鳥の鳴き声や蒸気機関車の音は著作物ではありません。しかし、CDの原盤権は発生し、初期状態ではCD製作者が権利者となります(法律上は「レコードに最初に音を固定した人」が著作隣接権者になると規定されていますが、マニピュレーターさんが権利者になるわけではなく、予算を出してプロジェクトを遂行した人(会社)が権利者になります)。

もし、このCDが違法コピーされたとすると、それに対して権利行使(差し止め等)をできるのは原盤権者です。鳥や蒸気機関車がが著作権に基づいて権利行使するのは想定し得ないですね。(もちろん、CDの中身が著作物の場合には原盤権者と著作権者(通常はJASRAC)の両方が権利行使できます)。

ここで、CDの録音にもマイクの設置やミキシング等々創作的要素はあるはずだ、現場のエンジニアやディレクターの権利はどうなるんだという話ですが、特に法律で定められた権利はありません。CD制作者との契約により対価をもらえるだけです。もちろん、CDが何枚売れるごとに印税をいくら払いますという契約になっている可能性もありますが、それはあくまでも会社と人との間の取り決めの話であり、著作権法上の特定の権利によって生まれるものではありません。

そもそも、CD(レコード)は日本の現行著作権法では著作物とはされていません。著作権法第1条で「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め」と著作物とレコードが別のものとして扱われていることからも明らかです。

個人的にはCDの制作(ミックスとかマスタリング)は相当にクリエイティブな作業(DTMやってる人はわかりますよね)と思うので、著作権法上なんらかの権利が付与される仕組みになっていても全然おかしくないと思うのですが、残念ながらそうはなっていないのです。

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