加圧トレーニングの方法特許がまもなくパブリックドメインに

加圧トレーニングについてはご存じだと思います。腕等にベルトを巻いて血流を押さえて負荷を高めた状態で筋トレすることで効果を高めるという方法です。自分もやってみたかったのですが、正規にライセンスを受けた業者しか提供できないようで、できる場所も限られてますし、器具も料金もちょっとお高めなので断念しました。

正規ライセンシーしか実施できないのは、言うまでもなく、加圧トレーニングの方法が特許で守られているからです(特許第2670421号)。その請求項1は(追記:すみません、よく調べたら一度無効審判が請求されて訂正が入ってました(下線部))、

筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉増大させる筋肉トレーニング方法であって、筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するものである筋力トレーニング方法。

となっており、ほとんど加圧トレーニングのやり方そのまんまで限定がかかってない強力な特許権です(追記:調べたら無効審判が2件係属(1件は審決取り消し訴訟中)してますので鉄板ではないかもしれません)。正規ライセンシー以外が提供できないのもわかります。加圧トレーニングの市場規模がどれくらいかわかりませんが、市場を完全に独占できてきたわけなので結構な価値がある特許ではないかと思います。

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そして、この特許の出願日は1993年11月22日なので、今年の11月22日に特許権が切れます。

この件に関して本家のKAATSU JAPAN株式会社がプレスリリースを出しています。要約すると、特許権は切れますが、他にも知財は持っているのでちゃんとこれからもライセンスしてねという「お願い」と、その他の知財権を侵害しないねでという「警告」です。その他の知財として重要なのは以下の2点です。

ノウハウ(営業秘密):加圧式トレーニングの実際にビジネスをやっていると特許として保護(および公開)していた部分以外にもいろいろなノウハウがたまるでしょう。たとえば、こういう年齢の人はこれくらいの負荷から始めるべきとか、こういう症状が出たら休ませるべき等々、です。これはライセンシーだけに提供される営業秘密と考えられるので不正競争防止法で保護されます。これを漏らした人や不正に取得した人は、契約違反に加えて、不正競争防止法に基づいて訴えられ得ます。

商標:KAATSU JAPAN社は「加圧トレーニング」を初めとする多くの商標権を所有しています(参考)。商標権は更新さえすれば永遠に続きます。なので、他人が「加圧トレーニング」という名称の商品やサービスを商売として提供すると商標権の侵害になる可能性があります。「加圧トレーニング」は記述的商標ぽい気もしますが、一度それを理由とする異議申立をクリアしているので、特許庁的には識別力ありと判断されたようです(現時点で商26条が適用されるかどうかは自分は利害関係者ではないのでノーコメントとします)。

知財の中で最も強力なのが特許であるのは間違いないですが、それ以外に、商標(ブランド)、ノウハウ(営業秘密)、著作権等々を組み合わせることで、ビジネスをより強く守ることができます。拙訳『オープン・ビジネスモデル』で主張されている知財は束にしてビジネス戦略と整合性を取ってこそ意味があるという主張そのままであります。

ただ、特許権が切れてしまえば、加圧トレーニングのアイデア自体はパブリック・ドメインになりますので、他社が、KAATSU JAPAN社の営業秘密を不正に取得することなく、KAATSU JAPAN社の名称や登録商標とまぎらわしい表示を使うことなく、同社の著作物をコピーすることなく、同じような商売を行なったり器具を販売するのは自由になります。本家はノウハウと実績に基づいた信用とブランド力をベースに勝負して、新参者は信用を築きつつ低価格で勝負することになり、結果的に消費者はメリットを得られるでしょう。

これまた、ジェネリック医薬品やネスプレッソ互換カプセル(こっちはちょっと確実ではないですが)と同じ構図です。

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加圧トレーニングの方法特許がまもなくパブリックドメインに への2件のフィードバック

  1. kurikiyo のコメント:

    偶然ですがこのエントリーの次のエントリーで書きました。
    審決自体はIPDLでの情報で見る限り妥当なんじゃないかと思います(証拠物件が全部見られるわけではないので何とも言えないところもありますが)。
    知財高裁ではどんな議論になっているのか興味はありますが、さすがに利害関係者でもないのに傍聴してる時間はありません。

  2. tori のコメント:

    これに対する見解も教えて欲しいです。
    まだ地財高裁で争いは続いている模様。
    http://zinendo.jp/shinketsu.pdf

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