【週末ネタ】アップルがiPhone販売の見返りにドコモに突きつけた条件とは

ドコモがいよいよiPhoneを販売かという噂(というか日経記事)が出ては消えてで「出す出す詐欺」とも呼ばれる状態になっています。SBやauと比較した契約数ではかなり厳しい状態になっていますし、iPhone販売以外の有効な対抗策もなさそうなので、ドコモもiPhone販売で「そろそろ反撃」しないとかなりまずいことになるように思えます。

これに関連してサイゾー系の媒体Business Journalに「ドコモ、iPhone販売拒む3重の壁…「今年確実」「絶対ない」業界内で割れる見方」なんて記事が載ってました。専門媒体ではないのでまじめに突っ込むのも何なんですが、一点気になることがあったので「週末ネタ」ベースで書いておきます。

記事中ではドコモの元役員の談話として、元々はドコモがiPhoneを独占販売する流れになっていたのに「アップルが突然、法外な要求を突き付けてきたのでドコモは交渉を打ち切り、ソフトバンクが漁夫の利を得る形になった」、そしてその要求が「独占販売権を与える代わりに、NTTの研究所が保有する携帯電話のすべての特許技術を開示せよという、とうてい呑めない要求だった」と書かれています。

特許制度をちょっとでも知っている人であればこれはおかしいと気がつくはずです。特許制度のポイントは技術を公開するかわりに一定期間の独占を与えることにあるので、特許技術は誰にでも開示されています(ネットでも無料で見られるようになっています)。取材者の聞き間違いだと思います。

この点についてもうちょっと調べてみると、昨年の日経の記事によれば、「この”アップルからの条件”については、実は販売台数だけでなく、NTTグループが持つ”特許などの知的財産権をアップルが自由に使えるようにする”」という文言がある」ということだそうです。アップルが要求したのは特許権のライセンスであったと考えた方が自然です。

特許権をライセンスするということは、ライセンス先に対して特許権を行使しないことを約束するのと実質的にほぼ等しいです。つまり、一種の非係争条項と言えます。

特許権に関する非係争条項と言えば、マイクロソフトがOEMメーカーに対してWindowsライセンスの条件として求めていたことが独占禁止法の観点から問題になり、公取委により独禁法違反であるとの判断がなされています(参照記事)。クアルコムもCDMAのライセンスに際して同様の条件を求めていたようであり、米国系メーカーだとありがちなパターンです(参照記事)。

アップルがドコモに対して求めたとされている特許権ライセンスがマイクロソフトがOEMメーカーに求めたのと同等のものかどうかはわかりませんが、少なくとも、日経の記事通りにドコモだけではなく、契約の直接の当事者ではないNTTグループ全体の特許についてまでアップルに行使しないこと(あるいはライセンスすること)を求めていたとしたならば「法外な条件」という点では間違っていないと思います。

アップルとSBやauとの間のiPhone販売契約がどうなっているのかわかりませんが、これらの企業の特許資産の価値ははNTTグループとは比較になりませんので、非係争条項も許容範囲と判断されたのかもしれません(あくまで想像です)。

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