「おんせん県」商標の拒絶理由について

大分県が出願した「おんせん県」の商標登録出願に対して拒絶理由が通知され、登録を断念したというニュースがちょっと前にありました。ニュース記事だけでは正確な拒絶理由(根拠条文)がわからず、かといって料金払って書類を閲覧するほどでもないかな〜と思っていましたが、大分県観光課からの「お知らせ」(PDF)に書いてあるのを発見しました。予想通り3条1項6号です。

商標法3条1項6号 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

「とにかく登録したらまずいだろ」的な商標登録出願に対して通知されることが多い拒絶理由です。たとえば、キャッチフレーズ(ただし、相当のグレーゾーンあり)、「平成」、(飲み屋・スナックの商標としての)「愛」・「純」・「蘭」、等々がその例です。

今回は、「”温泉県”は温泉を多く有している県を紹介する言葉として既に広く使用されていること」、「”おんせん県”という商標は”多数の温泉を有する県”という意味合いにすぎないと判断されること」という理由付けが一応付いてはいるのですが、やはり、商標登録出願に関して大分県と他県がもめていたことから、登録するのはまずかろうという判断がまずは働いたという感じがします。商標法は「創作保護法」ではなく「協業秩序維持法」的な色彩が強いので、このような業界の実情を重視した判断が行なわれることはよくあります。

一般に、3条1項6号の拒絶理由を覆すのは大変ですし、商標を大分県が独占する意図はない的なことを公言しているわけですから、登録を断念したのは適切だったと思います。また、通常はいったん3条1項6号で拒絶されれば、他人が同じ商標を出願しても拒絶されますので、パブリックドメイン的な位置づけで誰も独占できないが、誰でも使える状況に一応はなったのではと思います。

本来的には、大分県は「おんせん県大分」等や大分の地図等を付けてロゴ化した商標として出願をしておくべきだったと思います(まあ、これで権利取れてもあまり意味はないと言えなくもないのですが)。

ところで、群馬県在住の個人が「日本のおんせん県」なる商標を出願しているようですが、これがどう処理されるかはちょっと興味があるところです。(さらに言うと、この出願、指定役務が「広告」になってますが、前も書いたように、これは「広告業」のブランドとして(たとえば、「電通」、「AdWords」等と同カテゴリーで)の商標の使用を独占できるという意味なので、ちゃんと理解された上で指定したのかというもちょっと気になります)。

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