米特許訴訟検索サービスRPX Searchがなかなか便利です

米国は基本的にすべての裁判情報がPACER(Public Access to Court Electronic Records)というサービスにより公開されています。実費相当額の料金が必要(件数が少なければ無料ですみます)ですが、進行中のもののも含めてほぼすべての裁判情報にアクセスできますので、確定判決の一部が裁判所のウェブで公開されるだけの日本と比べるとかなり進んでいます。

と言いつつ、PACERはUI的に決して使いやすくはないですし、あらゆる裁判情報が含まれているので特許訴訟だけを調べる時にはかえって大変ですし、前述のとおり有料であるという問題があります。この代替案として、防御系パテントアグリゲーターのRPX社が提供するRPX Searchが結構使えることがわかりました。PACERやITCのサイトから特許訴訟関連情報のみを抽出してモダンなUIで提供しています。有料制会員サービスですが、無料会員でもある程度のことはできます。

たとえば、トップページには「最近の特許訴訟10件」が常に表示されていますので興味深い裁判情報をいち早く得ることができます。また、サーチボックスに企業名を入れるとその企業が当事者になった特許訴訟がリストされます。最近Yahoo!ニュース個人にも書いたマクロニクスと東芝の訴訟の情報を見ようと思えばサーチボックスに”macronix toshiba”と入れてサーチすればすぐ見られます(ただし、ITCの情報は有料会員でないと見られません)。

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なかなか便利なのはその特許訴訟の対象特許が一覧になって表示される点です。一般メディアの特許訴訟関連のニュースでは肝心の特許番号が書いてないことが多いですが、これを使えばすぐに調べられます。また、同じ特許による他の訴訟の情報も表示されます。たとえば、クライアントにトロールから警告書が来たとき等はこれで調べれば、そのトロールが他にどこを訴えているか等がすぐ分かって便利ですね。

こういう便利なサービスは政府(と司法)が裁判情報(およびITCへの申立て情報)をオープンデータとして公開していて初めて実現できるサービスなので、やはりこの点は米国は一歩先を行っていると言わざるを得ません。

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事務所のファイルバックアップ方式を見直しました

ちょっと前にGoogle Driveの中身が全部消えてしまって(操作ミスかシステム障害かは不明)Googleの中の人に戻してもらうという薄氷の思いをしたので、事務所のパソコンの重要ファイル類のバックアップ方式を見直すことにしました。

単にディスクの障害だけではなく、オフィス全体の災害(火事等)、オペミス、マルウェア、システム障害等にも対応できることが目的です。

以前からミラーディスク(Windowsの標準機能)は使っていますし、真に重要なファイルはGoogleドライブに同期しているので、仮に、事務所のPCが燃えちゃったなんてことになっても大丈夫なのですが。問題は、操作ミスやマルウェアへの対応です。Googleドライブ上のファイルは一定期間内であれば元に戻せるのですが、「半年前のファイルがない、間違えて消しちゃったかも(あるいはマルウェアに消されたかも)」という事態には対応できません。また、Googleドライブは指定した1個のディレクトリ下のファイルしか同期できない(この仕様は不便)ので、メールボックスだとかインターネット出願ソフトのファイルは同期対象にできません。

ということで、まずはバックアップ専用にNASを買いました。一昔前だとSOHO用NASと言えばBuffaloとIODATAのほぼ二択でしたが、最近はSynologyやQNAPなどの台湾メーカーが提供するNASキット(HDDは別売)が定番的選択肢になってます。HDD障害が起きたときに”純正”の高い交換ドライブ買わされるのはいやなのでNASキットを採用することにしました。価格コムで売れ行きナンバーワンのSynologyのDS216jにHDDはこれまた定番のWD Red 3TB×2のミラー構成としました。Synologyは日本語マニュアルとかがほとんどないので、ある程度詳しくないと大変かもしれませんが、なかなか使いやすいです。

バックアップソフトはSynologyに付属しているのを使ってもよかったのですが、定番のAcronis TrueImageを買いました。これで、重要ファイルを毎日NASに差分バックアップする構成とします。

さらに、金だけ払って使いこなせていなかったAmazon Unlimited Driveも使うことにしました(Acronisのバックアップ用クラウドは従量制なので検討対象外)。SynologyのNASはアドオンを使ってAmazon Driveを含むクラウドに同期できるのですが、その際に、一方向同期が可能です。すなわち、NAS側でファイルを消してもクラウド側には残す設定にできます。Amazon Unlimited Driveはその名の通り容量無制限なのでファイルを消さないで溜める一方の設定にしました。

なお、Amazon Unlimited Driveはかなり帯域が絞られているので、PCから直接使うといつまでたってもバックアップが終わりません(これが、今までうまく使えていなかった理由です)。いったんNASにバックアップしてからPCは電源オフ、夜中にゆっくりとNASからAmazon Unlimited Driveに再バックアップという方式が良いと思います。

これにより、直近3カ月くらいまではNASから任意の時点まで遡ってリカバリー、それ以前であれば、Amazon Unlimited Driveで無限に遡ってリカバリー可能な状態となりました(ただ、帯域制限によりAmazon Unlimited Driveからのリカバリーは相当の(数日単位の)時間がかかかると思います)。

出願関連の書類が消える洒落にならない状況になりますので、そのリスクを考えれば、妥当な投資だったかと思います。

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【実務者向け】商標登録出願の補正で間違って削除したしまった指定商品を元に戻せるか

特許出願の補正時のルールは「新規事項追加禁止」なので、一度補正で削除した内容を別の補正で元に戻すことは認められます。

一方、商標登録出願の(意匠もそうですが)の補正時のルールは「要旨変更禁止」なので、一度補正で削除した内容を別の補正で元に戻すことは要旨変更として認められません。

では、手続補正(たとえば、「商品AとBを削除する」とします)を行なった後にやっぱりBは必要だったという時に、手続補正書自体に対する手続補正書を提出して「商品AとBを削除する」を「商品Aを削除する」に補正すれば、結果的にBを復活することができるのではないかと思いましたが「方式上の不備無く手続補正を行った場合、その手続補正書自体について補正を行うことはできない」のでやはり駄目なようです。

何となくそうではないかと思っていましたが、特許庁に確認をもらいましたので書いておきます。

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Yahoo!ニュース個人のヒット記事(2016年11月版)

また更新し忘れですw。11月は多忙であまり記事を書けませんでした。

第1位.なぜ入試過去問のPDF化が著作権侵害になってしまうのか

出版社が社内保存用に過去の入試問題をPDF化していて保存していたのを、著作権侵害の疑いがあるということで削除したという話です。別に入試問題に限った話ではなく、多くの社内資料にも関連してくる話です。長期保存用のPDF化が複製権の権利制限として著作権法に書かれていないことからしょうがないのですが、明らかに法律が社会の実態に合ってないですね。

第2位.黒夢の商標権オークションの落札者について

解散したロックバンド「黒夢」の商標権が事務所の税金滞納による差し押えて競売にかけられていた件です。落札者が誰かが話題になっていましたが、公報データからは現在の事務所関係者のようなのでまあ一件落着でしょう。ただ、個人で権利取得すると個人情報が公報で公開されてしまうのがちょっと問題ですが。

第3位.ドワンゴ対FC2の知財ガチンコ対決について

「ブロマガ」の商標権で揉めている両社ですが、これは動画コメント機能の特許権に関する話(商標権の話も書きたいのですが結構状況がややこしいので、なかなかまとめられません)。個人的にはサーバーが海外にある場合に日本の特許権で権利行使できるかが大変興味があるところです。是非判決まで至って欲しいです。

第4位.ダイソーで売っているiPhone用Lightning充電ケーブルとアップルの特許について

第5位.トヨタの”アルミテープチューニング”の特許出願について

4位と5位は昔書いた記事、記事が少なかった月にランク入りする常連ですw

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新Google翻訳は特許翻訳に使えるか

ニューラルネット技術の採用により、Google翻訳が飛躍的に精度を向上させたことは周知かと思います(参考記事)。以前は、独語→英語のようなロマン語似た言語間の翻訳ならまだしも日本語への翻訳はちょっと厳しかったのですが、今や日本語と英語間でもかなり自然な翻訳が可能になっています(他の言語は読めないので検証できないですが、たぶ同様に精度が上がっているのでしょう)。

当然ながら、今までは非現実的だったGoogle翻訳による特許翻訳も十分検討に値するようになっています。

たとえば、適当に選んだ英語公報の一部を訳すと、こんな感じです。

In addition, the loading of an operating system (“OS”) refers to the initial placement of the operating system bootstrap loader. In one embodiment, during the OS load, a sector of information is typically loaded from a hard disk into the system memory. Alternatively, the bootstrap loader is loaded from a network into system memory. An OS “boot” refers to the execution of the bootstrap loader. This places the OS in control of the system. Some of the actions performed during the OS boot include system configuration, device detection, loading of drivers and user logins.

さらに、オペレーティングシステム(「OS」)のロードは、オペレーティングシステムブートストラップローダの初期配置を指す。一実施形態では、OSロード中に、情報のセクタが、通常、ハードディスクからシステムメモリにロードされる。あるいは、ブートストラップローダがネットワークからシステムメモリにロードされる。 OSのブートとは、ブートストラップローダの実行を指します。これにより、OSがシステムの制御下に置かれます。 OSの起動中に実行されるアクションには、システム構成、デバイス検出、ドライバのロード、ユーザーログインなどがあります。

 

十分読める日本語になっていると言えるでしょう。さらに言うと、”indexing 〜, identifying〜”という形式の方法クレームを訳すと、ちゃんと「〜索引付けするステップと、〜識別するステップと」と日本の請求項ぽく訳してくれるのでびっくりしました(原文にはどこにもstepなんて書いてないのに)。

ただ、上記の例文からもわかるように、である調とですます調が混在したり、用語の統一がなされなかったりするのでチェックは必要です。また、上記の文章ではないですが、なぜかFIG.1を図2と訳したり、否定文を肯定文で訳したりすることもあるのでさらに注意が必要です(構文解析をしないで機械学習だけでやってるのでこういうことになるのでしょう)。

自分の場合だと、英語→日本語で最終納品する場合は、Google様にやらせて自分で直すのと、最初から自分で直すのでは、そんなに時間が変わらないという感じでしょうか(一般に他人の訳文直すのは結構時間がかかります)。

PCT国内移行とか外国語出願のように後から誤訳訂正書を出せるケースで翻訳文提出の〆切が迫っている場合には便利かもしれません。米国出願のIDSにも使えるかもしれません。日本語が怪しげな海外の格安業者に任せるよりは全然ましでしょう。

さらに、自分は英語と日本語以外は読めないので、中国語とかスペイン語のOA等の中身をざっと理解する分には有用であると思いました。

しかし、ニューラルネット(ディープラーニング)の仕組みは一応理屈では分かっているのですが、どんな英文投げても瞬時にそれなりのクオリティで翻訳してくれる(しかも無料で)のは、何かコワイです。

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