ラーメン二郎本トラブルに関する法的考察

J-CASTニュースに「しずる村上のラーメン二郎本がトラブル 「勝手に出したと店主が激怒」の情報」なんて記事が載っています。お笑いコンビ「しずる」の村上純氏が「人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ」という本を出版したところ、ラーメン二郎三田本店店主が「出版を許可していない」と主張して揉めているそうです。

基本的は両者の話し合いということになると思いますが、法的にはラーメン二郎側はどのような手段を取れるのでしょうか。

実は、ラーメン二郎は一悶着あった後に商標を登録しています(4652738号)(IPDLの固定リンクががが)。なお、この一悶着については本ブログの過去記事「【やや雑談】ラーメン二郎ののれん分けと商標問題について」)をご覧下さい。

しかし、「ラーメン二郎」の商標の指定商品は「ラーメンを主とする飲食物の提供」ですし、そもそも単行本のタイトルは商標法上の商標ではないとされています(定期刊行物やシリーズ物の名称であればであれば商標とされ得ます)ので、商標権に基づく権利行使は無理です。

「ラーメン二郎」が有名であるとするならば(個人的には十分有名だと思いますが一般消費者にとってという話です)、不正競争防止法の周知表示混同惹起行為あるいは著名表示冒用行為(2条1項1号、2号)にあたる余地もあります(不正競争防止法の「商品表示」という概念は商標よりも範囲が広いです)。

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

しかし、今回の事件とよく似た構図の「スイングジャーナル事件」(スイングジャーナル社が『スイングジャーナル青春録・大阪編』というタイトルの書籍出版は著名表示冒用行為にあたるとして著者である元編集長を提訴)では、裁判所は、書籍タイトルは(不正競争防止法上の)商品表示にあたるが、このタイトルは著者が編集長を務めていたスイングジャーナルとの出会い等を書いた本であることを的確に表現しているにすぎず、雑誌名『スイングジャーナル』と類似するものとは判断できないとし、請求棄却しました。

というわけで、知的財産権に基づいて権利行使するのは難しいと思います。店主が公開してほしくないと思っているエピソードが書いてあったりするとプライバシーなどの問題が生じるかもしれませんが、それは知財法の範囲外です。

ところで、この本の出版元は光文社なんですが、例の土屋アンナ事件の原作(原案)本も同社だったわけで、この手の許諾プロセスがちょっといい加減なんじゃないかという気もします。

追記:本買ってきました。表紙も(ちらっと読んだ限りでは)内容も思ったよりフリーライド色が強かったです。しかし、ラーメンは著作物にも不正競争防止法の商品表示にも当らないと思うので上記結論は変わりません(ラーメンにパブリシティ権や商品化権を認める「画期的判決」でも出れば別ですが)。とは言え、この内容であれば、道義的な点からは店主の許可はちゃんともらっておくべきだったと思います。(追記^2:ちょっと誤解を招いたかもしれませんので付記しておきます。二郎を揶揄するような内容はありません(逆に二郎愛に満ちています)。ただ内部事情的な話にちょっと触れているので、やはり道義的な面からはちゃんと許可を取っておくべきだったのではという意味です。)

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